HAPPY NEW YEAR

 

 

 バタバタっと、部屋の外の廊下をすごい勢いで走る足音が聞こえる。

俺は、ベッドの中で聞き耳を立てて、足音の主の姿を想像してみる。

もうすぐ俺の部屋の前に辿りつく、息を切らしてドアの前で深呼吸をする。

 ドアに鍵を差し込んで、回す音が聞こえる。

「おはよう、サイファー」

ベッド・ルームのドアを開けて、スコールが笑って入ってくる。

窓から差し込む光の中に立ったその姿が、まぶしくて目が開けていられない。

 「まだ、眠いの? 」

近くの椅子を引き寄せて、座って頬杖をついている。

 「いやっ、もう起きるとこだった」

 「昨夜の雪が、積もってるんだ」

急いで、走ってきた訳はそれかと俺は納得していた。

 「カーテン開けてくれよ」

 一面の銀世界が、ぱっと部屋の中を明るく照らし出す。

 「冷えると思ったら…」

そっと、スコールの髪に指を伸ばして融けた雪のせいで濡れた水滴をぬぐいとる。

その冷たい唇に そっと触れるだけのキスをして、肩にもたれかかってきた

スコールの頭をそのままにして、ベッドにもたれて、窓の外を見ていた。

 「歩いてたら、足の下で音がするんだよ、そしたら、この音をあんたと聞いて

 みたいなと思って、走ってきたんだ。それに…

 今日から新しい年が始まったし、…あんたは嫌がるかもしれないけど」

その続きの言葉を待たずに、もう一度唇でその先を塞いだ。

少し、強引な長めのキスに、唇の隙間から小さな声が漏れた。

 ベッドから立ち上がると、俺はそのままシャワー・ルームに向かう。

 「すぐすむから、待ってろ、その代わり」

 「えっ…? 」

 「続きは、帰ってからな」

 少し、頬が赤くなったのを見逃さずに、俺はスコールの喜ぶのを見るのが

好きだから、例え今、嵐の中だろうが、外に飛び出すんだろうなとかとりとめの

ない事をいろいろと描きながら、シャワーを浴びるためにドアを閉める。

 

 

back