| 雨の夜に
いつのまにか寝ていたのか、部屋の中が暗くなっていた。 ほんの少しだけ横になるつもりが、いつのまにか夜中。 時計を見ると、午前1時を差していた。 外は、雨が降っているらしく静かな音が聞える.。 「雨か…」
立ち上がって、シャツのポケットの中から煙草を取り出す。 マッチで、火を付ける。一瞬に燃えあがる炎を見るのが好きだった。 俺が、マッチを擦るたびスコールは嫌な顔をする。 「その匂い嫌いなんだ」 煙草の煙をフ〜ッとかけると、けむたそうな顔をする。 「人の嫌がる事ばっかり…」 (ついつい、虐めたくなるのが愛って物じゃないか) 不機嫌なスコールを、横目で見ながら笑った。
一人、ベッドに座ってタバコをくゆらせる。 (スコール、今、何してる?) 夢の中にいるはずの、スコールの寝顔を思い浮かべる。 一人のベッドは冷たくて広い。 スコールのいない空間は、とてつもなく暗く感じる。 (参ったよな。惚れてるのは俺の方かよ)
夜が明けるのを待ちきれない気分で、時を過ごす。 雨が静かに時を告げる。その一筋一筋が朝を連れてくる。 雨の中、そっと部屋から抜け出してスコールの部屋に向かう。 起きているはずのない真夜中の時間。世界中が、朝が来るのを待っている。
スコールの部屋の窓灯りが、俺を安心させてくれる。 そこに存在していてくれていると、俺に安堵感をくれる。 (俺ってさ、部屋が暗いと駄目なんだよ) そう云って笑ったスコールが浮かぶ。 窓灯りが、白く揺れて暗やみの中に希望を灯す。 夜明けが来たら、真っ先にドアをノックしよう。 雨に濡れて立っている俺に、驚いて部屋を開けるスコールが浮かぶ。 空が少し、薄ら青くなってきた。雨は相変わらず、降っている。 でも、今夜の雨は俺に何かを教えてくれている。 一人じゃないと云う気持ち、誰かを大切に思う気持ち。 部屋の前に立って、一度目のノック。 ニ度目を待たずに、扉が開く。 優しい温もりが、同時に胸の中に飛び込んでくる。 |
