加同協ニュース №27     02/12/20
11月22日 第11回勉強会報告
11月22日、加茂名小学校多目的ホールにおいて、第11回勉強会が行われました。約100人が参加し、大阪大学の池田寛先生の 「学校と地域の共同による教育コミュニティづくり」 と題した講演を受け、学習しました。以下、講演要旨。
学校と地域の共同による教育コミュニティづくり
               大阪大学・池田寛先生
一昨年度から地域教育協議会 (すこやかネット) が334校の中学校で立ち上がった。(一昨年度 160校、昨年度 90校、今年 84校) 進み具合はいろいろあるが、地域教育協議会ができることによって、違った活動が見られるようになった。学校や地域が元気になったと聞く。38分のビデオであるが、その一部を見てもらう。
(ビデオ)
教育コミュニティ すこやかネット 地域教育協議会
「地域の子どもは地域で育つ」~継続は力なり~
○A中学校の紹介
・夜間の巡回などの活動等を通して、学校も地域も活動している。
・修学旅行で被爆体験の語り部にヤジが飛んだことをきっかけにして・・・。
・校区一体での子育ての会の活動 (荒れていた当時をかえりみての話)
・自分だけの子どもではなく地域の子ども全体をよくしようとする取り組み。
○B中学校 すこやかネットの紹介
・お年寄りとのグランドゴルフでの交流 子どもたちとの交流。
・交流を通して街であっても挨拶ができる子どもたちが増えてきた。
・すこやかネットを始めることで人と人とのふれあいが生まれる。
・その中でも苦労,地域全体をまきこんだ活動ができるようになった。
・地域教育力 (コミュニティ作り) によって不登校の子どもたちが減ってきた。
・B中学校では、いきいきふれあい祭りというイベントを通して、いろいろな組織や会が参加し、祭りにだんじりを呼んだりもした。学校と地域を橋渡しをするのがすこやかネットの役割だと言う。
○C小学校サポータークラブの紹介
・誰もが学校を応援できるように考えた人材バンク
・子どもたちの安全確認をするために親だけでは難しい。なんかあったらいってやと言ってくれるお年寄りの声もあった。自分が特技と思わなくても学校にとって大切な能力がある。学校を通して自分の自己実現を図れる、みんなで知恵を集めて地域全体をよくする。
○狭山市 だれもが参加できるスポーツのコミュニティー作りの紹介
・その他 障害のある子どもたちとのコミュニティー作り・幼稚園でのコミュニティー作りなどが紹介されていた。
学校と地域の連携の広がり
○D小学校での活動の紹介 
・もともと地域の活動が活発だったが、加えて婦人会や子育ての会の交流が学校でもできるように学校を開放していた。
クラブ活動の講師を地域の人が担当する場合もある。(将棋クラブのビデオ他が映る)。それを通して子どもたちとのふれあいも生まれている。
昼休みに図書室で、子どもたちに本の読み聞かせをしているマザーグースの会の活動が紹介される。(お母さんが本を読んであげているという感じで・・・)。
子どもたちの方からも情報のやりとりもあった。ふれあいルームを利用している人々の連絡会議もあり、これからも学校の開放の流れがある。土曜日の解放なども話し合っている。
・PTAのお母さんの中にも、大阪の池田市の事件を受けて、保護者が興味をどんどん持つようになっていた。子育てネットワーク他いろいろなネットワークが連携している例とお話。
○E中学校の活動の紹介
・親父の会が集まって、一回目は飲み会で、学校に対して何ができるかなあと 話し合うことから始めた。学校での地域の祭りでは、自分たちのブースを作って、焼きそばなどの模擬店を作る。
中学校で作られたのをきっかけに小学校でも親父の会が作られ、地域の人たちがつながっていく。
・地域コーディネーターの育成を大阪府が目指している。活動を通して、地域で喜んでくれる楽しい活動が基本。細くても長く続けることが大切。それまでやってなかったPTA活動をしてこれはおもろいやンと思った。
子どもたちの喜ぶ顔がまず、うれしい。負担と考えるか、苦労を通して喜びを糧とするかいろいろあるが、地域の人も分かってくれつつある。学校のシステムの中に入れていければよいのだが・・・。
~ビデオが終わる~
4つのポイント
◎学校と地域をつなぐものが必要になって来ていた。
学校が地域の中にありながら、地域教育の一環になっていなかった実情
学級崩壊などの問題に対して保護者に対して助けを求める勇気がないのか。
そのための架け橋になる地域教育協議会が必要。
◎地域の教育機関・組織の連絡調整
地域教育に責任を持つ母胎が必要になってくる。
◎子どものための活動の場と機会の創出
10年前から塾通いが増えている実情をふまえて、その裏には活動する仲間がいなくなっており活動する場所がなくなっている。塾に行くしか場所がない。地域が責任をもって土曜日の子どもたちが活動する地域教育の責任母胎が必要。
◎学校教育活動へ地域はもっと進出しなければならない。
○アメリカでの実践
アメリカの学校を見学してみると、教師以外の大人が学校の中でたくさんいるのに出くわした。授業の中でも多くのボランティアが入り込んでいる。NPOの人や地域の人の活動を支援している。
1日に毎日150人の人が支援に来ている学校をいくつも見るうちに、こういうやりかたが日本でも可能ではないか?
ある教師は 「こんな学校ありなんや」 とびっくりした。3~4年まえから 「開かれた学校」 「学校ボランティア」 というのが言われているが、日本はそういっても大変遅れているのも事実である。
○すこやかネット以前のふれあい教育推進事業
地域教育協議会の予算がつけられたが、その前の歴史 (前の5年間) のふれあい教育推進事業 (同和地区を含んだ中学校40+その他15校) では、家庭の教育力向上と学校の学力向上を目標にしてがんばったが、何をしていいのか分からない学校が多かった。
報告会では、面白い報告が2年目までほとんど見られなかった。成果を力説する報告が多かったが、3年目の前半までの報告会も同じであった。後半の10月の報告会で、一つの中学校が壇上で、発表したが、それがビデオの最初に見てもらったA中学校だった。
長崎の被爆者の語り部さんを聞いたときに、中学3年生が、静かにせず騒いでいる。そんな状態で一人芝居が始まって何分かたつと聞こえよがしにあくびをする、「もうかえろや」 「かえれ」、ガムやあめ玉を投げつけた。そのことが夕刊の新聞に報じられて保護者たちが飛び上がった。
子どもたちからそれ以前に授業中にうるさくて勝手に授業を飛び出す子やケンカが毎日のようにおこり、トイレにはたばこの吸い殻もあるとのこと。「警察沙汰になるようなことはないやろう」 と思っていた親。
学校の中でどうなっているか全部教えてくれないかとせまる親がいた。聞いた保護者たちは、「ここまで来ていたのか」 と信じられないという様子だった。
保護者の何人かが厳しい学校批判をしたが、大部分の保護者は、驚いたことは驚いたが、教師任せにしていた親の責任を感じた。次に学校と家庭と地域が連携することでまとまっていった。
校区フェスティバルやゲストティーチャーやいろいろな活動を取り入れていたことで、子どもたちのケンカやいさかいが消えていき、遅刻をする子どもが明らかに減っていった。この一年間の取り組みで、学校は変わっていった。
いろいろな中学校で地域とともに取り組む中で、明るい兆しが見えてきた例が報告されてきた。
学校が変わった典型的な例の一つに、B中学校がある。非常にあれた学校であった。6年前に青少年指導員が、パトロールをしていると、朝の10時やお昼の1時という時間帯に自動販売機の近くに何人も中学生がいる。商店街にも何人もの中学生がいる。30人ほどの不登校生がいた。
根気強く話しかけているうちに、「学校おもろうないんか」 という。話きいたるから家に遊びに来るかと聞いてみると、素直についてくる中学生がいた。たまに学校に行っても居場所がないという。また家にも居場所がないそうだ。
そんな話をしてすっきりして返っていった少年。しばらくして、友達をつれて不満をしゃべっていき、口コミで悩みを聞いてもらうために多くの少年が青少年指導員のところにくるようになった。
学校の方では青少年指導員のことは知っておらず、しばらくして、小学校につとめる青少年指導員の知人から彼のことを知り、生徒指導と教頭が青少年指導員の話を聞きに伺った。
彼から 「子どもたちの話を聞きましょうか」 という提案があり、学校へ行かせるような取り組みを親と地域で連携していきますからと言ってくれた。3年後に不登校生が減った。
堺市でO157がはやり、キャンプが中止になって、45万円が中に浮いてしまう。中学校で校長先生が、日曜日に学校1日貸しますから、お祭りやったらどうですかという提案があった。そこで、いろいろな組織や団体に呼びかけて80人くらいの実行委員会を作った。
実行委員会でのことだが、そこには学校側の代表も入っており、あれていた学校に対して学校批判があった。教師は一生懸命やっているんですがという謝罪したが、地域の人々は一様に驚いて 「学校も大変やなあ。なんかできることあったらゆうてや」 と言ってくれた。
地域の組織に職業体験をやりたいと告げると、商店街連合会の人が 「わしがいっしょにまわったるわ」 「わしも近所に寿司屋があるから、しごいてもらえ」 「近くに工場があるから、たのんでみたろ」 という声があがった。ここに学校と地域がいっしょに職業体験の体制ができあがる。
また校区フェスタも非常に効果があった。その活動を通して、学校と地域の壁を一気にぶち壊した。グランドゴルフをするためにやってくる地域のお年寄りがでてきた。今ではB中校区は、地域の人には非常に評判のよい学校になってきている。
私が注目している学校ウエルカムというふうな団体がある。Cサポータークラブ。呼びかけ文がすばらしい。子どものために何かしたいという人は応募してくださいと言っている。最初一人は60代後半の人がOさんを訪ねてきた。子どもが好きで、何かしてやりたいという。
「私がやれることといえば 『おはよう』 と言うことだけやねん」 と話す。学校にやって来てその活動を今も続けている。最初20人たらずで始めたサポータークラブだったが、会報でどんどん増えていっている。現在140人であり、広報、園芸、図書クラブなどができている。
ビデオの中でも出ていたが、花壇を作って花を植えている。日本の学校で花壇が綺麗な学校は、10校の中で1校だが、そんな学校でも 「職員の人が花好きで・・・」 というのが多い。子どもたちが自分たちの力で花壇を作っている学校がどれほどあるのだろうか。
それならば、地域の人に花壇の場所を開放したらどうだろうか。私も昔から提案しているのだが、2年前からそれをCではやっている。
図書ボランティアの人に学校の図書室を見てもらった。行ってみると、子どもたちの行き来しない場所に図書室があった。ならんでいる本に、子どもが読みたい本がない。もっと違う本をよみたいだろうに・・・。
さっそく図書室を移動してもらい。カーペットをしき、古本屋さんで面白い本を何冊もいれた。そういう変化が起こっている。図書室は劇的に変わった。
○「学校応援団」の誕生
コミュニティールームなどという部屋がどんどん増えている。学校に地域の人が入ってこれる状況が生まれている。違う年代の人たちが交わるようになってきている。婦人会、子育て、ファミリー劇場の人、マザーグース (読み聞かせ) の交わりがあった。
対立もあったが、そういう対立から本当の共存のあり方が培われるのではないだろうか。違う年代の人たちが、親子の様にフランクに話し合える。子どもも気軽に預かってくれるような場所ができる。
また若い就学前の子どもたちの親たちのつながりができている。子育てをしながら不安を持っている親が都会には多い。
自信をなくし、子育て放棄や児童虐待までおこり、いろんなことを相談したい人たちが土曜日の幼稚園の開放を求めた。若い母親父親が集まってきて、話をする機会ができるようになった。
地域教育協議会の活動によって、教育文化の再構築が行われている。人から学ぶ文化としてだが、年齢の縦の関係が作られつつあるのではないか。上のものは下のものを面倒見ていく責任。子どもたちが大人から学ぼうと気持ちをもう一度もとうとしている。
大人を尊敬しなくなっている日本の子どもたちが増えていた。今の子どもたちに大人から学ぶべきものがないという子どもたちが多いと言うことが、年令が高くなるほど多くなる。
それが、変化している。なぜ若者がかわったかというと、大人との交流を通して大人を尊敬する態度が生まれたのではないか。
ある学校で、菊の鉢がならんでいたが、校長先生がこれが何か分かりますかと聞かれたが、それは菊の鉢のことではなく、何年か前に蹴破られた壁を補修した跡であった。
しかし、今は壁を蹴る子どもはおらず、またその廊下の補修の前には菊の鉢がおいてある。自分たちが苦労して作った菊を倒して壁をこわす中学生は、ここにはもういない。
おじいちゃんの菊の話を一生懸命に聞いた中学生がいた。授業に集中できない子どもたちが、私語をいっさいせずに、真剣に聞いている。肥料や土、水のやり方、日のあて方など、おじいちゃんの中にある菊作りの技、技術。このことを知らずに街で見かけたら、このおじいちゃんにこういう態度で接することができただろうか。
このようなことが一つ重なり、二つ重なり、教育を受けていくうちに大人を尊敬する態度が生まれてきたり、授業をまじめに受ける態度が育つのではないか。
学校が積極的に地域にアプローチするF小学校の例
タウンワークス人権総合学習。子どもが涙をためている横で、親がハンカチで涙を押さえる親との体験があった。自分史の発表会の公開学習は、200人の見学者も含めて涙を出すほど感動的なものだった。
保護者のほぼ100%が参加。その日は、家に帰って人権についての親子の会話が行われ、親も子どもたちにとって 「大事な教育」 と感じられるようになってきている。
子どもたちばかりに押しつけた人権教育に親が気付き、家庭でも地域でも人権が伝えられる教育コミュニティーが作られつつある。環境学習健康学習、性教育も同じではないか。
学校がやっている取り組みは、地域に広げる努力は必要だし、可能である。そういう取り組みをこれからも私はやっていきたい。
質疑応答
Q:教員の役割というのは?親と地域の方のみで変わるのでしょうか?われわれはコーディネートする力が必要だと聞くが・・・。
A:地域の人に任せてというが、教師は常にその側にいるわけだが、保護者や地域の人たちと教師がいっしょにいるということを子どもは感じ取っているのではないだろうか。
一緒に取り組むという姿勢が教師には必要であるが、活動が進んでいないところでは、教師の地域に対するイメージが貧困な学校である。PTAとしかつきあわない学校では広がっていかない。
子どもを持っていない人たちや子どもが卒業した人たちがたくさんいるが、そういうところまで地域人材の広がりがないところでは、うまくいかない場合が多い。学校ウエルカムがうまくいっているのは、50代以上の方も多く、そういう人のパワーをうまく取り込んでいる学校が多い。
効果的に意味のある地域学習をしているのは、地域学習をしている中で10の内1つぐらい。総合的な学習では教師が口を出していない場合が多いが、子どもが調べたことしか分からない場合が多い。
いくつかのグループの分かれて発表しても、それがつなげられないとそれは学習として、成り立っていないのではないだろうか。
それらを、つなぐ能力を持たせるためには、子どもたちの学習の何倍も教師が、地域を知っていなくてはならないだろう。教師は地域の人ともっと話をしていく必要があるのではないだろうか。
Q:保護者の方の変化があればお聞かせ願いたい。
A:地域教育協議会の活動が盛んなところでは、地域を上げてと言われているが言葉だけでなく、実際に行われている。自分の子どもさえよければという感じではなかなか難しい。教育が個人主義化しているが、そうではない取り組みがどんどん増えていきつつある。