JSH 2025 高血圧管理・治療ガイドライン 総合要約

   ~医師用要約10ページ 日本高血圧学会(JSH)高血圧治療ガイドライン(JSH2025)

第1章:高血圧の定義・分類と診断基準

日本における高血圧の基準値、および測定環境による分類は以下の通りである。今改訂でも、診察室血圧と家庭血圧の間に乖離がある場合は、家庭血圧による診断を優先する原則が維持されている。

1. 診察室血圧および家庭血圧の分類(mmHg)

分類 診察室収縮期 診察室拡張期 家庭収縮期 家庭拡張期
正常血圧 未満 120 かつ 未満 80 未満 115 かつ 未満 75
正常高値血圧 120~129 かつ 未満 80 115~124 かつ 未満 75
高値血圧 130~139 または 80~89 125~134 または 75~84
Ⅰ度高血圧 140~159 または 90~99 135~149 または 85~94
Ⅱ度高血圧 160~179 または 100~109 150~159 または 95~104
Ⅲ度高血圧 180以上 または 110以上 160以上 または 105以上
(孤立性収縮期高血圧) 140以上 かつ 未満 90 135以上 かつ 未満 85

2. 白衣高血圧と仮面高血圧


第2章:血圧測定と臨床評価

高血圧の治療方針を決定するためには、単なる血圧値だけでなく、標的臓器障害や並存疾患、背景にあるリスク因子を包括的に評価する必要がある。

1. 検査・評価項目

2. 心血管リスク層別化

患者の「血圧分類」と「他のリスク因子(喫煙、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、高齢、肥満など)」および「心血管病の既往」を組み合わせ、低リスク・中等度リスク・高リスクの3段階に層別化し、治療開始の緊急度を決定する。


第3章:生活習慣の修正(非薬物療法)

すべての高血圧患者、および正常高値血圧・高値血圧の者に対しても、まず基盤となるのは生活習慣の修正である。単一の修正よりも、複数の修正を組み合わせることで降圧効果が相乗的に高まる。


第4章:降圧目標

患者の年齢、背景疾患(並存疾患)によって目指すべき降圧目標値が異なる。本ガイドラインでは、忍容性(副作用なく治療を継続できること)がある限り、以下の目標値の達成を目指す。

降圧目標値一覧(mmHg)

対象患者 診察室血圧目標 家庭血圧目標
成人(75歳未満) 未 満 130 / 80 未 満 125 / 75
高齢者(75歳以上) 未 満 140 / 90
(忍容性あれば 130/80 未満)
未 満 135 / 85
(忍容性あれば 125/75 未満)
糖尿病合併患者 未 満 130 / 80 未 満 125 / 75
慢性腎臓病(CKD)蛋白尿(+) 未 満 130 / 80 未 満 125 / 75
慢性腎臓病(CKD)蛋白尿(-) 未 満 140 / 90
(忍容性あれば 130/80 未満)
未 満 135 / 85
(忍容性あれば 125/75 未満)
脳血管障害既往(慢性期) 未 満 130 / 80 未 満 125 / 75
冠動脈疾患(CAD)既往 未 満 130 / 80 未 満 125 / 75

注意(JSH2025のポイント): 75歳以上の高齢者であっても、合併症や身体機能、認知機能が保たれており、降圧薬の副作用(起立性低血圧やふらつき)が出ない場合は、成人同様の 130/80 mmHg 未満(家庭血圧 125/75 mmHg 未満) を目指すことが推奨される。


第5章:薬物治療の基本原則と薬剤選択

生活習慣の修正で目標血圧に達しない場合、あるいは初診時から高リスク(Ⅱ度・Ⅲ度高血圧、あるいは心血管病既往あり)の場合は直ちに薬物療法を開始する。

1. 主要降圧薬(第一選択薬)

主要第一選択薬は以下の4系統である。患者の病態に合わせて選択する。

  1. ACE阻害薬(ACEI) / ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬): RA系(レニン・アンジオテンシン系)抑制薬。糖尿病、CKD(特に蛋白尿陽性)、心不全、心筋梗塞後の患者に最優先。
  2. カルシウム(Ca)拮抗薬: 降圧効果が確実で安全性が高く、高齢者や脳血管障害期の患者に広く用いられる。長作用型を推奨。
  3. 利尿薬(チアジド系・チアジド類似薬): 少量を他剤と併用することで強力な降圧効果を発揮。高齢者や食塩感受性高血圧に有効。
  4. β遮断薬: 頻脈、虚血性心疾患(心筋梗塞後)、心不全を合併している場合に第一選択となるが、非合併例での単純な高血圧への第一選択からは除外される傾向にある。

2. 治療アルゴリズムと多剤併用


第6章:並存疾患をもつ高血圧の管理

特定の疾患を合併している高血圧患者では、臓器保護効果を最大化するための厳格な薬剤選択が求められる。

1. 脳血管障害

2. 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)

3. 心不全

4. 慢性腎臓病(CKD)

5. 糖尿病・メタボリックシンドローム


第7章:高齢者および女性の高血圧

1. 高齢者高血圧の特徴と注意点

2. 女性の高血圧・妊娠高血圧


第8章:特殊な高血圧および治療抵抗性高血圧

1. 治療抵抗性高血圧(難治性高血圧)

2. 二次性高血圧

全高血圧患者の約10%に存在するとされる。原因を治療することで高血圧が完治、または著明に改善する可能性があるため、若年発症や急激な増悪、低カリウム血症を伴う場合は必ず鑑別する。


第9章:高血圧管理における医療連携と包括的アプローチ

高血圧治療の最終目標は、脳卒中や心筋梗塞、腎不全といった「心血管病イベントの抑制と健康寿命の延伸」である。医師による薬物処方だけでなく、以下の包括的管理が推奨されている。

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