対話型 腹痛・胃拡張 鑑別診断サポート

20歳男性 高度胃拡張症例の考察

初期対応と緊急性の判断

胸部単純X線で高度胃拡張が確認された場合、まず生命を脅かす病態を除外し、患者を安定させることが最優先です。特に胃軸捻転は緊急手術が必要となるため、迅速な判断が求められます。

最優先事項

  • バイタルサインの評価(ショックの有無)
  • 胃管挿入による胃内減圧
  • 輸液による脱水・電解質補正

緊急性を要する兆候 (Red Flags)

  • Borchardt三徴(胃軸捻転の疑い)
    • 吐物のない嘔吐発作
    • 上腹部膨隆
    • 胃管挿入困難
  • 急激なショック状態への移行
  • CTでの門脈内ガス像(胃壁壊死の示唆)

鑑別診断エクスプローラー

高度胃拡張の原因は多岐にわたります。物理的な閉塞によるものか、消化管の機能的な問題によるものかを大別し、それぞれの可能性を探ります。下のタブをクリックして、各分類の詳細を確認してください。

閉塞性病変:物理的な通過障害

胃排出路閉塞

消化性潰瘍瘢痕、腫瘍、稀な先天性異常(輪状膵など)が原因。

胃軸捻転症

胃がねじれる緊急性の高い病態。Borchardt三徴が特徴。

機能性病変:蠕動運動の低下

胃不全麻痺

糖尿病、甲状腺機能低下症、薬剤などが原因。器質的閉塞の除外が必須。

機能性ディスペプシア

器質的異常がないが症状を呈する。除外診断が基本。

慢性特発性偽性腸閉塞症 (CIPO)

稀な疾患。腸管の蠕動運動障害により慢性的に腸閉塞症状を繰り返す。

上腸間膜動脈 (SMA) 症候群 詳細

SMA症候群は、急激な体重減少などを契機に、大動脈と上腸間膜動脈(SMA)の間に十二指腸が挟まれて通過障害をきたす疾患です。若年痩身者に多く、本症例でも重要な鑑別対象となります。

診断のポイント

特徴的な臨床症状

食後の腹痛・嘔吐。腹臥位や左側臥位で症状が軽快する体位依存性が特徴です。

画像診断(CT)

診断の鍵となる解剖学的指標をCTで評価します。下のグラフは診断基準となる数値を示しています。

治療アプローチ

第一選択は保存的治療です。栄養状態の改善(体重増加)と、食後の体位療法(腹臥位など)が中心となります。

CTによる診断基準

診療所での対応と専門医への紹介

診療所では、緊急性の評価と初期対応が中心となります。診断の確定や専門的な治療には、高次の医療機関との連携が不可欠です。以下の基準を参考に、適切なタイミングでの紹介を検討してください。

専門医への紹介を検討する基準

  • 初期の保存的治療(胃管減圧、輸液)に反応しない場合
  • 胃軸捻転症や重度の器質的閉塞が強く疑われる場合
  • 造影CT、消化管造影、シンチグラフィーなど高度な画像診断が必要な場合
  • CIPO、輪状膵など、診断・治療に専門知識を要する稀少疾患が疑われる場合
  • 初期検査で原因が特定できず、診断が確定しない場合
  • 外科的治療が必要と判断される場合