冠動脈疾患二次予防のための薬物療法

LDL-C目標値 < 70mg/dL 達成のための厳格な内服治療
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

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ストロングスタチン (HMG-CoA還元酵素阻害薬)

冠動脈疾患二次予防における薬物治療の第一選択薬です。肝臓でのコレステロール合成を強力に阻害し、血中LDLコレステロールを著明に低下させます。ガイドラインでは最大耐用量の使用が推奨されています。

アトルバスタチン

10mgで35%、20mgで45%の低下

ロスバスタチン

5mgで40-50%の低下

ピタバスタチン

2mgで41%低下

主な副作用と頻度

下図は主な副作用の発生頻度を示したものです。頻度は報告により幅がありますが、臨床的に注意すべき点を中心にまとめています。

筋肉関連症状 (2-11%)

軽度の筋肉痛や違和感が最も一般的です。CK値の上昇を伴わない場合も多くみられます。

肝機能障害 (<2%)

AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇がみられることがありますが、多くは一過性かつ軽度です。定期的なモニタリングが推奨されます。

横紋筋融解症 (<0.03%)

頻度は非常に稀ですが、最も注意すべき重篤な副作用です。急激な筋肉痛、脱力感、CK値の著明な上昇、ミオグロビン尿(赤褐色尿)などが特徴です。腎機能障害を併発する可能性があります。

エゼチミブ (小腸コレステロールトランスポーター阻害薬)

小腸でのコレステロール吸収を選択的に阻害する薬剤です。単独投与の場合、エゼチミブ10mgはLDL-Cを15%低下させる。
ストロングスタチンと作用機序が異なるため、併用により相加的なLDL-C低下効果(40~50%)が期待できます。
スタチン最大耐用量でも目標値未達の場合の主要な追加選択肢です。

エゼチミブ 10mg

LDL-Cを15%低下

主な副作用と頻度

一般的に忍容性は良好ですが、消化器症状が比較的多くみられます。スタチン併用時は、筋肉関連症状の頻度が単独投与時より若干増加する可能性があります。

消化器症状 (1-5%)

便秘、下痢、腹痛、腹部膨満感などが報告されています。

肝機能障害 (頻度不明?1%)

スタチン併用時にも見られることがあります。AST, ALTの上昇が報告されています。

筋肉関連症状 (スタチン併用時 CK上昇 2-3%)

単独投与では稀ですが、スタチン併用時には筋肉痛やCK上昇がみられることがあります。横紋筋融解症の報告も稀にあります。

過敏症 (頻度不明)

発疹、蕁麻疹などの皮膚症状や、稀に血管浮腫やアナフィラキシーなどの重篤な過敏症が報告されています。

治療戦略フローチャート

冠動脈疾患二次予防におけるLDL-C<70mg/dLを目標とした、ガイドライン準拠の段階的薬物治療戦略のフローです。
各ステップで目標達成度と忍容性を評価し、治療を最適化します。
スタチンは肝臓でのコレステロール「合成」を抑制し、エゼチミブは小腸でのコレステロール「吸収」を抑制します。
この異なる2つのメカニズムが補完的に作用することで、単剤療法をはるかに上回る強力なLDL-C低下効果を発揮します。
臨床試験では、エゼチミブをスタチンに併用することで、スタチン単独の効果に加えて、
さらに20~40%のLDL-C低下効果が上乗せされることが示されています。

Step 1

ストロングスタチン
最大耐用量を開始

?
Step 2

目標未達の場合
エゼチミブを追加

(忍容性確認)

?
Step 3

それでも目標未達の場合

PCSK9阻害薬(注射薬)の
追加を考慮