総説 第1期:後脚蹴り出し重複支持 第2期:遊脚期 第3期:前脚着床重複支持 第4期:片脚支持

 

 

資料:図説 正常歩行分析

【 歩行と跛行 −正常および病的歩行の研究− 1973 】 より

 

 

◆ 歩行の四期 ◆ 分解写真 ◆

A.総説
 

歩行の各時期の勉強を容易にするために、側面から見た被験者について、これらの時期にどのようなことが現れるか示しました。

はじめに矢状方向の移動の序論を述べ、あとの章で各時期について、側方、前方および水平方向の像を取り上げます。

種々な時期の名称については、

遊脚期(phase oscillante、oscillating phase)と

片脚支持期(appui unilateral、unilateral support)という呼称で一応足りるが、そのほかに

重複支持期(double appui、double support)があります。

重複支持期を観察するときには、第1は被験脚が前方にある重複支持期で、第2は後方にある重複支持期とする習わしです。

遊脚期と片脚支持期と同様に、重複支持にひとつの形容詞をつけることによって、第1,第2という番号をつけることを止めるよう提案します。

そこで重複支持のうちで、被験脚が後方にあるのを後脚蹴り出し重複支持(double appui posterieur d'elan、double posterior support of thrust)、前方にあるのを前脚着床重複支持(double appui anterieur de reception、double anterior support of reception)とよびます。

後方にある脚が蹴り出しを行う脚であるので、勉強はこの時期からはじめます。

被験者は側面を移動し、スローモーションでいくつかの像をとらえました。

 

◆第1期:後脚蹴り出し重複支持

両脚はコンパスの脚のように離れており、このコンパスは前脚と後脚を持っており、ここで注目するのは後脚です。それは推進力となる脚であり、動力学的に能動的な脚であるからです。つまり前進を保証する脚なのです。

蹴り出しをする脚なので、これを「後脚蹴り出し重複支持」と呼ぶことにしました。

模式図で後脚蹴り出し重複支持となっているのは、黒く(網掛模様)したほうの脚です。

 

◆第2期:遊脚期

床から離れているのは右脚であり、後方から前方に向かって左脚と交叉します。

これが「遊脚期」です。

 

◆第3期:前脚着床重複支持

支持脚である左脚と交叉してきたばかりの右脚が床に接し、体重を受けます。

この脚は前進の方向を定め、制動し、調節する役目があります。また調和をとらなければなりません。

この重複支持を「前脚着床重複支持」と名付けました。

 

◆第4期:片脚支持

蹴り出しを制動し、調節し、調和を与えたばかりの脚は、片方で体重を支持するようになります。

これが「片脚支持」です。

 

それでは、蹴り出し、遊脚、着床および片脚支持という歩行の連続した4つの時期をこれから勉強しましょう。

矢状面でのこの運動は、前額面でも水平面でも、同じ現象を伴っているのが分かるでしょう。

 

 

 

B.第1期:後脚蹴り出し重複支持
1.全体的観察:3つの面における蹴り出しの動力学
 

すべて動物の平衡と前進は、その支持面が少なければ少ないほど複雑であり、デリケートです。

そのよい例が二足動物です。

直立人類、ヒトは両足または片足で起立して平衡をとります。ヒトは立ったまま、その重心を後方の足から前方の足に移しながら進みます。

A図:矢状面での蹴り出しの優位

躯幹を押し出す後脚は、正確にいえば、達成しようとする目的に向かって、前方へ、運動の衝撃、つまり蹴り出しを与えます。

関節の形とその運動範囲は、前方に進むに適するようになっています。中足基節関節、距腿関節、膝関節は、矢状方向の移動面に適応した、厳密な意味での屈曲運動をするようにできており、股関節はそれらの運動に協力します。

大きな運動範囲を有し、前進に対して大きな機能を有するこれらの関節は、非常に大きな筋、つまり下腿三頭筋、大腿四頭筋、大殿筋によって駆動されます。これらのダイナミックな構造はいっしょになって、歩行、疾走、跳躍を実現します。

従来の記載とちがって、歩行の制動期を述べる前に、純粋な駆動期である後脚蹴り出し重複支持期を述べるつもりになったのは、この大きな機能を考慮したからです。

重複支持では、下肢はコンパスの両脚のように開いています。後方の脚は前方に向かって傾き、股関節は伸展し、膝関節は屈曲、距腿関節は伸展します。ついでこの折り畳み式の柱は、大腿四頭筋の収縮によって元にもどり、距腿関節は最大に伸展します。この蹴り出しのさいに生じる合力については、足や膝ではいくつかの明確な事実が分かっているが、引きつづいて次の項の図でこれを勉強します。

B図:側方への蹴り出し

矢状面での蹴り出しほど重要ではないが、これに伴う蹴り出しです。関節のシステムは極めて貧弱です。足ではそれは距骨下関節の振り子運動であり、その可動性は距腿関節とは比べものになりません。膝は側方への蹴り出しにはまったく関係しません。股関節はこれに関係します。側方への蹴り出しのシステムに関与する筋は、後脛骨筋、腓骨筋群、中殿筋に要約されます。矢状面では下腿三頭筋−大腿四頭筋−大殿筋の3筋の組み合わせがあるのと同様です。

C図:水平面

前進には躯幹と肩胛帯の動きをともないます。距骨下の動きにともなって変化する骨盤のねじれを代償する肩胛帯の動きが、詳細に観察されるでしょう。

 

2.矢状面:足の役割
 

A図:距腿関節を底屈させる強力な筋である下腿三頭筋は、蹴り出しの主動筋です(A3)。

後脚蹴り出し重複支持の過程では、伸展は緩やかではあるが、強力であるのが分かります。歩幅が長ければ長いほど、それは強力であり、下腿三頭筋が発達していればいるほど強力です。

正常歩行でのこの伸展は、約30゜です。それは第1趾の中足基節関節の伸展とともに変化します。

B図:力の配分はテコのアームの長さの割合に関係します。だいたいのところ、下腿三頭筋の量的な大きさは、前方の筋とすでに比例関係にあることが分かります。測定してみると踵骨に付着する筋と底屈筋とは、前方の筋の5倍であることが分かります。テコのアームの長さは、それと逆比例します。

C図:足底の全着床からはじまって、距腿関節がしだいに回転し、足底前半からしだいに第1中足骨骨頭へと、支持面が減少するのが見られます。

蹴り出しのさいには、伸展が徐々におこるということを注意しておきます。

この緩徐で強力な伸展を、前脚着床重複支持のさいにおこる足の伸展や急速な底屈と比較してみなければならないでしょう。

 

3.矢状面:膝の役割[下腿三頭筋−大腿四頭筋−大殿筋]の組み合わせ
 

後面の筋である下腿三頭筋と大殿筋は、足と股に対しては、これらを前方に押し出すのが主な役目です。しからば前面の筋である大腿四頭筋は、どのような働きをし、どのようにして蹴り出しの主動筋になるのでしょうか(A3)?

両脚がコンパスの両脚のように開いている歩行肢位で、被験者の後方の脚をもう一度みてみましょう。

脛骨の下で距骨から伝わる圧力を、求心力として脛骨軸をとって分解することはもちろんできます。横、縦の座標をつくってみれば、脛骨が垂直に近ければ近いほど、上方に向かう力が強くなります(B1)。脛骨が傾くにしたがって、その形は変化します。45゜に傾くと、水平の力は垂直の力と等しくなります(B2)。

下腿三頭筋と大殿筋が進行方向に最大に働くためには、膝は屈曲位に保たれていなければなりません。大腿四頭筋によってなされるこのような努力は、歩行では非常に重要であり、疾走や跳躍ではもっと重要であります。疾走や跳躍では、脛骨ばかりでなく、体全体が前方に傾斜し、しばしば水平に近くさえなるからです。

下腿三頭筋−大腿四頭筋−大殿筋の組み合わせは、非常に重要なものです。これを理解すれば、跛行の分析ができます。これらの3つのうち、どの1つが単独におかされても、まったく同じか、しからざれば少なくとも類似した跛行を呈するようになります。

A図:後脚蹴り出し重複支持の各相

第1相:股関節の部分的伸展。大殿筋による。

第2相:下腿三頭筋の作用で、距腿関節の伸展と膝の屈曲がおこり、後者は大腿四頭筋によって維持されます(A2〜A3)。

第3相:躯幹が前方に移動し、大腿骨は脛骨と同じだけ傾斜します。この動作をおこさせるのは、膝を伸展する大腿四頭筋と、股関節を最大に伸展させる大殿筋です。

 

4.前額面:側方蹴り出し、内外踝後方の筋と中殿筋
 

矢状面における2足歩行は、互い違いに足を置き換えることです。つまり前進するには、右から左、左から右と支持脚を交代させます。

前方に向かっての蹴り出しは、連続的に変化する側方への蹴り出しと組み合わされているはずです。この側方蹴り出しのさいに関与する関節と筋は、矢状方向のそれとは部分的に独立しています。

歩幅が75cmであるとすれば、歩隔は12cm(つまり左右に6cmずつ)を越えません。

このわずかばかりの動きのためには、関節の動きも少なく、関与する関節の数も少ないこと、つまり膝関節はこれに関与せず、また側方蹴り出しの筋は、前進を司る筋ほどには強力でないということが理解できます。

矢状方向の蹴り出しでは、距腿、膝、股関節は、下腿三頭筋−大腿四頭筋−大殿筋という下肢の最も重要な3つの筋の組み合わせで駆動される大きな関節に発達しています。

側方蹴り出しでは、足においては両踝後方の筋によって駆動される足根の小関節しか認められず、あとは直接股関節までさかのぼって、ここでは関節の自由な可動性があれば、中・小殿筋だけが動的役割を演じているに過ぎません。

足と股関節について、側方蹴り出しを詳細にみてみましょう。

足:A図:脛骨は常に、側方蹴り出しの方向とは反対の方向に傾くが、足は蹴り出しの最初には内反位をとり、ついで前足部の外反に移ります。

初期(A1)には足底全体が床に密着し、脛骨は後脛骨筋に引っぱられて内側に傾きます。この側方への傾きが内反を生じます。これは距骨下関節でおこります。

ついで踵が離れ(A2)、ついで前足部全体だけで体重を支持します。逆方向に捻転がおこり、外反位に回内することによって、前足部全体の荷重が、第1中足骨骨頭だけの接床に移行します(A4)。このようにして足は内反から外反に移行するが、この蹴り出しの第2相においては、前足部の回内による外反の延長にある中足部の関節で、距骨下関節の作用が増幅されます。そこで腓骨筋群、中でも側方蹴り出しの方向とまったく同じ方向に斜めに足底を走る長腓骨筋の役割を理解することができます。

模式図は、前方からと後方から、内反(A1)より外反(A2)に移る前額面での足の動きの種々相を示しています。またこれに応じた足痕の経過も示しています。

B図:脛骨を内方に傾ける後脛骨筋の作用に相当した、内反位への側方動揺を示す第1期。

C図 腓骨筋の作用により外反位をとる、反対方向への動揺。

Faraboeufは、距骨下関節の記載の中で、距骨の下で踵骨は回旋し、縦に揺れ、回転することを示しています。私たちはこのさい、”踵骨のローリング”(roulis calcaneen、calcaneum roll)という生理学的表現を提唱します。

股関節:歩いたり、走ったり、跳んだり、しゃがんだりという矢状方向での動きをおこす股関節の、屈伸運動範囲の大きさを、再確認しておきましょう。内外転の運動範囲はあまり大きくありません。つまりそれは側方蹴り出しをおこす側方における運動です。この運動をおこさせる筋である中殿筋は、たとえいかに重要でも、大殿筋には遠く及びません。

中殿筋の収縮(D)は、大殿筋が股関節の伸展をおこさせるのと同様に、腸骨翼を大転子の方向に引きつけます。次のような小実験で、その収縮を感知することができます。両脚をコンパスの脚のように開いて歩く恰好をします。一方の手掌を、後方蹴り出し脚の外側腸骨窩に相当する大転子の上方に置きます。側方への蹴り出しを加味した、下腿三頭筋による蹴り出しによって、前進運動を試みます。そうすると手に、中・小殿筋の強力な同時収縮を感じることができるでしょう。

躯幹は極めて重要な腹筋で、骨盤の上に支持されており、側方蹴り出しでは、反対側の側腹筋との共同関係が成り立ちます。つまり前と同様に歩行肢位をとり、一方の手を後方蹴り出し脚の外側腸骨窩に、他方の手を反対側の側腹部に置けば、右の中殿筋と左の腹筋の同時収縮が感知されるでしょう。

D図、E図:側方蹴り出しのさいの共同筋を示しています。

D図:前方から見た被験者。後脚蹴り出し重複支持のはじめ。後脛骨筋、中殿筋および反対側の腹筋が同時収縮しています。

E図:後方から見た被験者。後脚蹴り出し重複支持の終わり。中殿筋、腹筋といっしょに収縮するのは、腓骨筋群です。

側方蹴り出しは、歩幅に影響します。距骨下関節または股関節の強直によって、側方蹴り出しを支配する筋が作用しなくなり、その結果しばしば歩幅の減少という障害を起こすことがあります。

 

5.水平面:部分的に水平方向に作用する筋
 

矢状面および前額面での蹴り出しでは、多くの関節や種々の特殊な筋の組み合わせが認められます。あまり研究されていない水平面についても同じことです。筋と関節は水平面での回旋システムでの組み合わせを持っています。これに関与するのは距骨下関節、股関節および脊椎関節で、後者は骨盤の斜位の代償としての肩胛帯の斜位をもたらします。側方蹴り出しの場合と同様に、膝関節は、水平面での変位には、まったく関係しません。

A図:体重によって床に固定されている足では、踵骨の上で距骨骨頭が外方に動きます。つまり距骨の外旋がおこるのです。A1、A2の模式図で示すのは、踵骨上における距骨の回旋です。

B図:内踝の後にある後脛骨筋は、その腱の内踝前方の水平部分が短縮することによって、蹴り出しのための回旋(B1、B2)をおこす筋となります(A1、A2の矢印)。

C図、D図:内・外踝の後にある2つの手綱のような腱は、水平面における方向を決定する能動的役割を持っています。後脛骨筋は外から内に向かって下腿と交叉します。その起始部は骨間膜と腓骨で、内側に向かって舟状骨結節に付着します。

内側の手綱である後脛骨筋の作用は、蹴り出しの回旋を行うことであり、他方腓骨筋の作用は、遊脚期において、前足部の向きと歩向角とを元の状態にもどすことでしょう。

つまり長腓骨筋は、足底では後脛骨筋とは逆方向の斜位をとっています。後脛骨筋の下腿における斜位と、長腓骨筋の足底における斜位とは、歩行の生理学では興味ある因子であると思われます。

E図:股関節:後脚蹴り出し重複支持のはじめには、骨盤は後脚のほうに向いています。仙骨突起は骨盤の動きにともなって、大殿筋の起始部を動かし、この筋の付着部である大腿骨粗線から遠ざけます。

後脚蹴り出し重複支持の運動の間に、これらが互いに接近して、骨盤を横方向に戻そうとすることは、容易に理解されるでしょう。

この時期では、矢状面における股関節の主動筋である大殿筋は、股関節を伸展させることによる蹴り出しと、水平面における回旋による蹴り出しとを同時に行うのです。

躯幹では、両方の斜腹筋の組み合わせによって、脊椎を支えている張り網とは逆向きの回旋がおこるのが分かります。

 

 

 

総説 第1期:後脚蹴り出し重複支持 第2期:遊脚期 第3期:前脚着床重複支持 第4期:片脚支持

 

 

 

 

 

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